「うたあわせプロジェクト」Vol.09 の今回は
第18首 藤原敏行朝臣【古今集】 「住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ」を紹介します。
このうたを現代語訳すると
「住之江の岸に寄せる波の「寄る」という言葉ではないけれど、夜でさえ、夢の中で私のもとへ通う道でさえ、どうしてあなたはこんなに人目を避けて出てきてくれないのでしょうか。」
波でさえも寄ってくるのに、人目が気になるような夜ではないのに、あなたは夢の中でさえ私の元へ来てくれないのですね。という女性の恋心を詠ったうたとされています。
想い人と夢で逢う、夢で逢った人を好きになる。など
平安時代の恋人たちの間では「夢」はとても特別な意味を持っていました。
作者の藤原敏行朝臣は平安時代の貴族で三十六歌仙のうちの一人です。
当時から書道家として有名だったそうで、多くの書家が彼の書いた字をお手本として持ち歩くくらい達筆だったそうです。
このうたは女性目線でうたわれたとされています。
昔は女性から会いに行く事はめずらしく、男性が女性の家に通うことが習慣化されていました。
気変わりしてしまえば家には来ないわけですから、少しでも期間があけば捨てられてしまったのではないかという不安な気持ちが生まれるのも自然なことかなと思います。
今回のイラストは、この歌の主人公の女性ではなく、人目が気になり会いに行けない男性にフォーカスを当てて制作しました。
隠す、隠れるアイテムを描きました。また右手に持っている筆は彼が作者が書家であったことと、このうたを詠んだ女性に会いに行けずとも、返すうたを詠むとしたらどんなうたになるのかと、想像を膨らませて描きました。
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