「デザインの書」第2回の今回はパッケージと「書」について考えてみました。
宮城県 株式会社 一ノ蔵 日本酒「一ノ蔵」のラベルをご紹介します。
隷書風で落ち着いた品のある雰囲気を醸し出しています。この書は金子鴎亭(かねこ おうてい)が揮毫(きごう)したものです。
銘酒一ノ蔵の「良質な商品を正直に手を掛けて作っていく」コンセプトに沿い、蔵鋒でたっぷりとした深みをもたせつつ、おそらく中・長峰を使った、空気を含ませるような独特のかすれが効いています。「文化の伝承」を守る一ノ蔵の想いを「伝統文化である書」で汲み取った素晴らしい作品だと思います。
左写真:一ノ蔵「笙鼓 純米大吟醸」書:金子鴎亭(かねこ おうてい) 株式会社 一ノ蔵
右写真:文明堂のどら焼き「さんどら」 株式会社文明堂東京
次に、文明堂のどら焼き「さんどら」です。デザインは温かみのある印象です。漢字とは異なるひらがなのもつ曲線や丸みが、どら焼きのふわっとした柔らかさとフィットし、親しみやすさがあります。特に「ん」のカーブを大きく軽やかに空間をもたせつつ、対して「ど」は墨をのせてぽってりとまとめることで、コントラストが生まれ短調にならず奥行きがあります。ひらがなはシンプルなだけにバランスが難しいですが、それだけ書き手の工夫や個性が顕著にみられるので楽しいですね。
今回は私たちが手掛けたものではありませんが、このように意識して見てみると、何気ない生活の中には「書」の手書きを活かしたパッケージデザインがたくさんあります。またさらに新しい方面に昇華していけるのではと考えます。デジタルとアナログを掛け合わせるからこそ、それぞれの良さが生きて相乗効果を生み出します。
私たちも常に表現の一つとしてアナログを大切にしています。まずはどう表現したいのか、そこに「書」という選択肢、表現の可能性、伝わる力を私たちは持っています。NFORCE
by 3G
Comments