こんにちは、おもいびとの“ふみづき”です。
第80首 待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)12世紀ごろ【千載集】
『長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ』


【歌の解説】
(昨夜契りを結んだ)あなたは、末永く心変わりはしないとおっしゃっいましたが、どこまでが本心か心をはかりかねて、お別れした今朝はこの黒髪のように心乱れて、いろいろ物思いにふけってしまうのです。
昨夜一晩を一緒に過ごし、契りを結んだあなた。翌朝帰っていってから、後朝(きぬぎぬ)の歌をいただいて「いつまでも末長くあなたのことが好きですよ」と言葉をもらったけれども、その言葉はどこまで本当なのでしょうか。お別れした後、あなたの心をはかりかねて、この私の寝乱れた黒髪のように、心乱れて思い悩むばかりですわ。
この歌は、百人一首にも歌がある崇徳院の命で作られた「久安(きゅうあん)百首」にあるものです。久安百首は、いくつかのテーマごとに歌を詠んで合計で百首にするというもの。 この歌は、男が届けてきた後朝の歌に対する返歌という趣向で詠まれました。 そもそも平安時代というのは男性が女性の家に行って一晩を明かすという慣習がありました。「後朝」というのは男と女が一晩を明かした翌朝で、男が帰った後で女の許へ「昨夜はとても幸せだった」と一首詠んで贈る、という雅な慣習があったのです。 それに対して女性が返したのがこの一首というわけです。
【作者の解説】
待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ。12世紀ごろ)
神祇伯(じんぎはく)・源顕仲(みなもとのあきなか)の娘で崇徳院の生母、待賢門院(鳥羽院の中宮・璋子(しょうし))に仕えて「堀河」と呼ばれました。息子の崇徳院は天皇在位後政略で退位させられますが、その時に待賢門院も追放され、堀河も一緒に出家しています。
【ふみづきからヒトコト】
もっとも印象に残ったのが「黒髪の乱れて...」でした。彼女の複雑な思いがこの黒髪に集約していると感じました。愛情、不安、疑念、欲望、そしてそんな思いをめぐらしてしまう自分自身。そんな思いを髪の毛に見立て細い線で描くことで繊細な心を表現し、その髪の中には人物が浮かび上がります。さらに目を凝らして見ていただくと髪の中(中央やや右上)に片目が現れてきます。
信じたいが信じきれない。髪の中に浮かび上がるこの人物と目。あなたはどのように感じますか?
デザインで今を変えたい。
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